今私は猛烈に自分に挑戦している
この
お腹の中に共存している魔物に対しての挑戦。
舞台は理事長室。場面はここ何ヶ月かで1、2を争う重要な打ち合わせ会議。
私の席は理事長のど真ん前S席。
私の左隣はみんなの期待の新メンバー日本の未来を担うWebデザイナーの若き貴公子N村さん。
理事長室には上司のTさん含め名だたる会社をひっぱるお2人。
そして、1秒後には激しくお腹が鳴り響きそうな空腹でなおかつ何も武器のない新人女1人。
何でこんな食いしん坊が朝ごはんと昼ごはん食べなかったんだろう。
何でさっき打ち合わせと打ち合わせの間に、カバンの中に入ってたナッツを一気食いしなかったんだろう。
ほらあたしさ、まだ社会の仕組みとかちゃんと分かってないからけっこう時間かかるわけだよ。理解すんのに。まだスピードもついてってないから話の展開の早さについてくのに必死なわけだよ。
んで、昼の打ち合わせでめっちゃ集中してやっと今回のプロジェクトの細かいところまで理解して、
ふぅーこれであとは和気合い合いの打ち合わせだ。ちょっとおやつでも食べてさっきの打ち合わせの復習しよーっと
とか、ない集中力出しきってのん気なこと考えてたらさ、
もう、んな甘いこと言ってるやつは便器に流されてせめて下水道までの排水溝の汚れでも全部とって流されて社会に貢献しなさいくらいの勢いでさ。
2個目の打ち合わせも更に3展開先なくらいのスピードで。
ここは大人の空気を読むところかと思って、くるみを1つかじってそっとしまった。出しかけたおやつのナッツを。
スタバで最初の打ち合わせをしてからまたみんなで理事長室に戻って、新メンバーでの本気顔合わせ開始。
私の壮絶な闘いも開始。ゴーン。
あたしさ!もう本当に昔から、「お前のお腹の音がうるさくて寝れなかった」って言われ続けて早23年の女でさ!勝手に泊まりにきた友達からさえそんな苦情が出てくるような自己主張の激しい腹と共に生きてきてるんですよ!!
しまいにあたしの腹の中にはうるさいオッサンが3人くらいいると言われるようになり。もうこいつには困りっぱなしで。
そういえば中学生のときの家庭教師の先生もお腹の音がすごい人で、ご飯が出る前も2人で
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ どぎゅるるるるるる ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉ どかーーーーーーん(嘘)
ご飯食べたあとも2人で
きゅるるんっ ごろごろごろ ぎゅるんっ
とか、もう方程式とか因数分解とかimgだの過去分詞どころの騒ぎじゃなかった!!
琴絵先生との思い出はあたしの部屋で2人で鳴り響かせた腹の音の思い出しかない!断言できるもん!
数学の点数がいっこうに上がることがなかったのはそれのせいだったんだな!うん!
てな感じで、場面が本当に大事な打ち合わせの場だとしても腹の音を止めるなんてあたしからしたら
あ、今また鳴った。「うひゃおっ」って鳴った。ちくしょうやっぱ絶対誰かいるよこの腹ん中。
あ、そう。あたしからしたら前代未踏の試みなわけですよ。
でも人間さ、他のことに集中してたらさっきまで気にしてたこととかケロっとなくなるじゃん!
咳とかもそうじゃん!だから、しばらく理事長の言葉に本気集中してて!
そしたらさ!まじ人間の体ってすごいよね!一切腹を意識しなかったらやっぱ忘れるもんだよね!
んで、腹が今までであたしに見せたことのない粋な働きとかしちゃって!
あたしの呼吸に合わせてスゥッッーと本来いつもなら遠慮の知らないおばさんくらいの音量で鳴り響いてた腹の音が消えてくんだよね!!!!!
何だよすごいじゃん腹!!!そんな上品な技できんだったら昔からやってよ!!!やればできるじゃん!!!
とか頭ん中でまじ感動して、腹を褒め称えて。
んでたまにの沈黙のときにまた腹が鳴りそうなタイミングがくるんだよねこれがまた。
それで、前、意識を集中させて自分の腕毛を立たせてた友達を思い出して
もうマインドコントロールしかない。って半ば未知の世界に足を踏み入れて
すごい。私はすごい。この暴れん坊の腹だって止められる。天才だよ。腹止めの才能あり。プロ。腹止め協会の理事長。腹よしずまれー
とか自分に言い聞かせてたら、さすがに腹もこいつはちょっとヤバイと思ったのか、さすがに鳴らない。
多分このときのあたしの眼光は並々ならぬ鋭さで、危うくビーム出ちゃってパリーンって目の前のもん割っちゃうんじゃないかってたまにフと我にかえったりするんだけど。
そんなときに現れた社員さんのために、全員起立でガタガタッとか椅子の音がしてみんなワラワラっと話したその瞬間に!
グゥゥーーーーと腹!!!しかしこの音にまぎれて誰もあたしの腹の音なんて気付かない!!!!なんて空気の読める腹!!!!誰にも聞こえないところで鳴らせておく気の利いた小技!!!!なんて人の気持ちと立場を読める腹!!!!!秘書!?一流秘書の資格あり!?I'm proud of you.
なんて感動しちゃってさ、一通り話も済んでちょっと空気が和んだときに
ゴッッ
あ。
一瞬理事長とN村くんの意識がピクっと反応するが、そんな小さなことでお2人とも動じないし魔物と共存してきた私もちょっとやそっとじゃ動じない。
が、1度の音漏れを封切に、今まで上品におしとやかにしていた腹が最初は遠慮気に、だんだんと姿を現せて暴れだす。
グゥゥ
ギュゥゥゥ
ゴォォォォォッ
もうさ、段階踏むのとかやめてほしい。聞かされてる人も次を予想しちゃうじゃん。
え?まだくんの?まじ?えーきたよーうわー今のデカッ
みたいなさ。
いや、こんな小娘の腹の音なんて誰も気にしてないことは分かってるしあたしも会議に集中してるんだけどね。
こーゆーときに限って会議って長引くのね。不思議な法則だよね。
結局終わり頃には、前半の恥じらいも何のことやら。完全に開き直って鳴らしてました。腹を。
1日のスケジュールを広い視野で見て、自分も腹も集中できる環境を作ろう☆
ガオー!!!!