Friday, June 15, 2012

年商10億ドルの男がレイヴについて語った

この前記事で書いたザッポス伝説のトニー・シェイさんが本の中でレイヴについて語ってた箇所が新鮮で面白かったからメモメモ(^o^)


↓Tony Hsiehプロフィール↓

中学時代からパソコンの天才と呼ばれ、その後ハーバード大学でコンピュータサイエンスを専攻。学位所得。ネット広告企業リンクイクスチェンジ社を立ち上げ、マイクロソフト社に2億6千万ドルで売却。
その後、zappos.com(シューズ専門通販会社)を創業。10年足らずで年商10億ドル突破、リピート顧客率75%、新規顧客の43%は口コミ。また、米Fortune紙の働きたい企業ランキング15位(2010年)、全米小売業協会には、「最も革新的な小売業者(2010年)」に選ばれるなど。2009年、アマゾンに12億ドルの巨額で売却した超有能経営者&投資者。



初めてレイヴ・パーティーに行った時のことは忘れられません。

私が知っていたのは、テクノ・ミュージックやハウス・ミュージックがたくさんかかっているということだけでした。

それ以前にレイヴと同じ類の音楽がかかっているナイトクラブに行ったことがありましたが、そこでの音楽はとてもひどくて、どこのクラブでも一番広い部屋でなぜいつもこんな音楽をかけているのか理解できないと思ったことを覚えています。

音楽には歌詞がなく、同じビートが止めどなく繰り返されるだけのように思えました。エレクトロニック・ミュージックの魅力がただわからなかったのです。


同じ類の音楽がかかるのを知っていたので、倉庫でのレイヴに行くのはあまり楽しみにしていませんでしたが、私を除くトライブのみんなが行きたがったので、私もついて行くことにしました。


そして次に私が体験したことは、私のものの見方を永遠に変えたのです。


巨大なグリーンのレーザービームの光の束が、フットボール場10個ほどもの広さの倉庫中を照射していました。客全員がDJのほうを向き、ビートに乗って一体となって動いているところを、スモーク・マシーンが夢のように超現実的な感覚を創り出す助けをしていました。

レッドブルの缶がそこら中に散らかっていて、ウルトラバイオレットのブラックライトが壁や天井の蛍光性の飾りをほかの銀河宇宙から運ばれてきたどこかの星の植物のように光らせていました。

しかし、すごかったのは、飾りでも、ブラックライトでも。スモーク・マシーンでも、レーザーでも、倉庫の巨大さでもありませんでした。この光景とこの一瞬以外の何かが私の全身からまったく予想していなかった感情的な反応を引き起こしていました。

自分でもそれがいったい何だったのか、どうしてそういう気持ちになったのか、はっきりと指摘することはできませんでした。





私はこのレイヴ・シーンが自分の行き慣れたナイトクラブ・シーンとどう違うのか分析しようとしました。そう、飾りとレーザー光線はかなりクールでしたし、部屋いっぱいの人たちが踊っているこの会場は私がそれまで見たなかで最も巨大な一部屋でした。


しかし、そういったことのどれも、私が体験した、言葉を失わせるような尊敬と恐れの入り混じった感情の説明にはなりませんでした。グループの中で最も論理的で合理的と知られるこの私が驚いたのは、自分を押し流す抗いがたいスピリチュアルな感覚でした。

宗教的な意味ではなく、そこにいる人たちはもちろん、世界中の人々と深くつながっているという感覚でした。




そこでは誰の評価にもとらわれない感じがあり、倉庫で周囲を見回した私は、音楽に乗って踊っているどの人も、ひとりひとりがただあるがままの自分でいることが素晴らしいと思いました。



何が起こっているのかをもっと詳しく分析しようとして、ここの踊りは私が普段見ているナイトクラブのものとは違うことに気付きました。ここでは、自意識とか、見せるために踊っているという感じがしなかったのです。

ここでは、ほぼ全員がDJのほうを向いて踊っていました。
DJはステージ上で威勢よく、集まった人々にまるでエネルギーを注いでいるかのようでした。そしてみんながDJを崇拝しているかのような感じでした。


当時は知りませんでしたが、10年後、サイエンス・オブ・ハピネスという分野の研究で、他者との肉体的な共時性と、自分自身よりも大きなものの一部となる(そのため自意識を束の間なくす)ことが相まって大きな幸福感につながるのでさり、レイヴ・シーンは人間が何万年も前から経験してきたことの現代版にすぎない、ということが示されているのを知りました。



言葉でいくら説明されても、私は理解できなかったでしょう。自分で体験しなければならなかったのです。




PLURというのは、「ピース(平和」「ラブ(愛)」「ユニティー(調和)」「リスペクト(尊敬)」の頭文字をとった言葉で。レイヴと普段の生活の両方であるべきふるまい方を示すスローガンでした。




PLURの考え方とレイヴ・カルチャーは、レイヴ・シーンを超えて私に影響を与えました。私にとって、それは相手の外見やバックグラウンドに関係なく常に出会いを歓迎しようという哲学に近いものでした。

どこかで誰かと交流することは、すべてこれまでにない視点を得るチャンスです。みんな人間ですから、ビジネスや政治や社会的地位で支配されているこの世界に生きていると、こうした視点を見失いがちです。

レイヴ・カルチャーは、世界がよりよくなり、人が互いの人間性をただ感謝し合えるようになる可能性があることを思い出させてくれたのです。





引用:顧客が熱狂するネット靴店
  ザッポス伝説 
  トニー・シェイ 著







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